いつもの朝、同じ時間の電車。
流れる景色の緑は明るく色づいて、近づく夏を知らせている。
一人で電車に乗る時は外を眺める余裕なんかなくて……。
こうやってのんびり電車に乗れるのは、エー子が一緒にいてくれる安心感があるから。
「も~昨日は興奮しちゃったよねー! あんなに急激に葉山先生とお近付きになれちゃうなんてー。ホント、美月のドジがファインプレー」
「嫌味!?」
「わはは」
今朝のエー子はいつもに増して饒舌だ。
「だってさー、これで一歩前進じゃない。美月のことを忘れる男、この世にいないわよー」
「……」
大げさな……。
「……エー子、一歩前進も何も、私はもう……」
「は!? 何言ってんの!……気持ちは分かるけどさ、『もう一生恋なんてしない』なんて言ってほしくないんだけど」
「……」
私は返事が出来ずにいた。