焦りのようなものから冷や汗がどっと吹き出る。
ドアに一番近い端の席に座っていた私は、混み合う電車の中で一人、身動きが取れなくなっていた。
激しい電車の走行音と乗客のにぎやかな話し声。
そんな中で、コソコソ、ヒソヒソと私のことを話している声が、ひときわ大きく聞こえてくる気がしていた。
きっと以前の私なら、なんのためらいもなく席を譲ることが出来ていたはず……。
私は聞こえないフリをしようと、ギュッと目を瞑った。
その時
「駅着いたよ」
私に向けられたその小さな声に顔を上げると、自分の降りる駅名がアナウンスされていた。