「じゃあ、またね」
星沢駅とアナウンスが流れると、唯ちゃんは手を振って電車を降りた。
何かが少しずつ、少しずつ動き出しているのがわかった。
今まで止まっていた私の何かが、先生との出会いをきっかけに少しずつ、少しずつ、それはもちろん良い意味として――――。
まだ、今の自分に何が出来るのか、何がしたいのか、わからない。
相貌失認という障害を持って、いったい何が出来るのか……。
相貌失認になっていなかったら、私の未来はどうなっていたんだろう……。
もしかしたら、先生にも出会わず、どこかですれ違っていたかもしれない。
でもきっと、こんな私でも出来る何かが絶対あるはずだと、そう信じている。