「以前に"出会わない遺伝子"って話を聞いたことがあるんだ」
車を運転しながら、お父さんが話し出した。
「出会わない遺伝子?」
「うん。結婚してずっと子供が出来ない夫婦がいて、検査しても二人に問題はなかった。でもそれが原因か二人は別れてしまった。そして同じ頃、二人とも別の人と再婚して、そうしたらすぐお互い夫婦に子供が出来た」
「へえ……そんなことがあるんだね」
今まで、わんわん泣いていたお母さんが、お父さんの話にピタリと静かになっていた。
「この世にはどんなことをしても合わない、出会わない遺伝子が存在するんじゃないかって話なんだ」
「うん……」
出会わない遺伝子か……。
そう考えると、どんな人もすべての命が奇跡に思える。
「でも僕は思うんだよ。遺伝子とはいうけど、それもすべて神様が決めていることなんだろうなって」
「神様……?」
お父さんからそんな言葉が出るなんて……。
「ずっと昔から決められていた出会うべくして出会う人。そのためなら、どんな試練でも乗り越えようと思うんだろうって……」
「うん……」