「私は相貌失認という障害を負っています。こうやって話していても、一人一人の顔の区別はつかないし、今、この部屋を出て戻ってきても、誰が校長先生で、誰がPTA会長なのか、それも分からなくなってしまう」


私の話にまたざわつきが起こり、障害を知らない人から、首をかしげ『相貌失認?』という声が聞こえていた。


「人の顔が認識できない、それは親でも自分の顔でさえも」

近くでずっと、お母さんは泣いていた。


「自分の不注意で起きた事故で命を落としそうになって、障害を負ってしまった……だからいつも両親にはこれ以上心配かけたくないと思って生きてきた」

「美月……」

「だけど、今までの自分と障害を負ってからの自分とでは世界がまるっきり変わってしまった……」


圭先生が私を見つめた。


「人の顔がわからないなんて外に出るだけで恐怖で、知り合いに話しかけられても誰か分からないことの方が多かった。それが常に罪悪感で、いつも自分がいけないんだと思って生きてきた」


今まで親にも話せなかったことを、口にするたび声が震えた。