私はベッドの上のクッションを思い切り投げつけた。

クッションが何かに当たりバサッと音をたてて落ちた。

見るとそれは、あの薄い冊子、ドラゴンヘッドとドラゴンテイルの本だった。


「……」

私はそれを手に取るとパラパラとめくった。

よく読んでいた星の神話。



『ドラゴンの胴体を頭と尻尾の二つに断ち切りました。
不死の甘露であるアムリタを飲んでいたドラゴンは死ぬことが出来ず、ドラゴンヘッドとドラゴンテイルという別々の生き物として生まれ変わることになったのです』



そもそも一つだったドラゴンが、二つに……。

別々の生き物として、離れ離れに……。

元に戻ることを、一つになることを許されず、いつまでも廻り続けている。

お互いを求め、追いかけ、永遠に天空を廻り続ける……。

久しぶりに読んだ物語は、なんだか切なくて、切なくて……。


永遠に解けることのないドラゴンヘッドとドラゴンテイルの悲しみの輪を巡る不運がまるで、繰り返し起こる私と先生の不運と重なって思えて……。

涙が溢れた……。

窓の外を見ると、大きな月が見えた……満月……。

夜空を見ると先生を思い出して、さらに胸が痛んだ。


「なんで先生じゃダメなの……」


私は星空を見つめ、願った。



どんな試練も困難も絶対乗り越える。


だから、私と先生を離さないで━━━━━。