「美月の気持ちも分かるが、まだ若いんだ、先はまだまだある……」
「何が言いたいの!?」
私はお父さんとお母さんを真っすぐ見つめ、言った。
「娘がこんなボロボロの恰好で帰って来て、なんとも思わないの!? お母さの第一声がそれ!? 危ない目に遭ったのを先生が助けてくれたんじゃない!」
「……」
「……」
怒鳴る私に、二人は無言のままだった。
「私が相貌失認だと……障害があると知って離れていく人がいる中で、危ない目に遭ったり、嫌がらせをされたり、そんな私を先生は守ってくれてるんじゃない! そんなことも知らないで、自分たちの都合ばっかり押しつけないでよ!」
私は痛む足をムリに動かし、引きずるように二階へ上がった。
「美月! 美月!」
私を呼ぶお母さんの声が、何度も何度も聞こえていた。
部屋に飛び込むと、荒々しく浴衣を脱ぎ、床へ叩きつけた。
「……」
イライラして、モヤモヤして……悔しくて、苦しくて、また涙が溢れた。
行き場のな怒りが湧いてくる。
なんで……。
先生と距離が縮まればいつも邪魔が入る。
先生とうまくいきかければ、必ず困難が私たちを阻む。
なんで……
なんで……!