ドン!


「きゃあ!」


突然、壁に叩きつけられた。


「『誰』!? なんでいつも僕のことが分からないんだ!」


「!」


その怒鳴るような声を聞いて、以前、駅で突き飛ばされた時のことを思い出した。

あの時の……!

私は怖くなり、その場から逃げようと走り出した。

だが、すぐに腕を掴まれ、その場に押し倒されていた。

見た感じの体格に似合わず、とても力が強く、掴まれた腕はびくともしなかった。


「痛っ……んんっ!」


声をだそうとした時、手で口をふさがれた。


思い切り頭を振り、声を上げようとした時……


ドォン!! と、花火の音が響いた。


目の前の空に大きな花火が開くと、「わあ!」と遠くで人々の歓声が聞こえた。

次々に上がる花火が地響きのように、横に押し倒された私の体に振動を与えるような、そんな感覚だった。

再び私の口が手でふさがれた。


近づく顔、私の耳元で……



「僕のこと、忘れられないようにしないと」



そう聞こえた。




体が無意識にゾクッとふるえ、一瞬、目の前が真っ暗になった――――。