「美人で可愛い、『羽田 美月さん』せいぜい目立ってくればいいわよ! 恥ずかしいことなんてないでしょ? どうせ人の顔なんて分からないんだから!」

「!」

香代ちゃんはそう言うと、私をステージの真ん中へ押し出した。


ステージに向けられた簡易照明が目に飛び込んできた。

まぶしくて、顔を背ける。

「わあ!」という大きな声がステージの周りから聞こえた。


「羽田 美月だー!」

「髪短くなってるー」

「可愛いー!」


お祭りに来ていた人が、口々に私の名前を叫んだ。


「羽田 美月が出てきたら勝ち目ないじゃんよー」

「なにこれ、やらせなわけ? バカにしてるー」


ステージにいるコンテストにエントリーしていた女の子たちからも文句が聞こえ始めていた。


ギラギラとまぶしく照らす照明に目がくらむ。

ステージを囲むように集まっている人々の顔がなんにも見えなくて、まるで、のっぺらぼうの顔が口元だけニヤリと笑っているような、そんなふうに見えていた。

ガンガンと照らされる照明と、キンキンと響く人々の声に、くらっと立ちくらみを起こしそうになる。

感じたことのない苦痛、こんなに人たちの視線や声が怖いと感じたことはなかった。


息苦しくて、呼吸が速まる。