「エー子!」
「あ、エー子だ!」
エー子を呼ぶたくさんの声に振り向くと、そこにはうちの学生服を着た女の子が立っていた。
「あ! 美月!?」
「ウソ! 美月だ! どうしたの髪!?」
その声を聞くと、チア部のみんなだということが分かった。
「美月ショートも似合うよー」
「ありがと……」
「エー子も浴衣似合うじゃん」
「えー嬉しー」
「……」
エー子の楽しそうに話す笑顔を見て、胸がチクッとした。
エー子は今もこの仲間たちと部活を頑張っていて、私は何も……。
「……エー子、みんなと行って来ていいよ」
「え……でも……」
「大丈夫。私もぷらっと出店見て帰るから」
「美月……」
私は笑顔で手を振ると、境内の方へ歩き出した。
昨日髪を切ったばかりで、まだ誰にも声をかけられていないのが救いだった。
それが安心感を増し、出店で買い物をしたり、ふらふらと一人お祭りを楽しんでいた。
日も暮れ、"祭"と書かれた提灯が赤々とまぶしく見え始め、人もさらに増えていた。
「……」
私はふと後ろを振り返った。
たくさんの家族連れやカップルの姿。
「……?」
なんだか違和感を覚え、何度も振り返る。
だが、何も変わった様子はない。
「……」
なんだろう……誰かに見られているような……。