「ゆかた着るとさ、七夕祭りを思い出すよねー」
「うん」
秋祭りの会場へ向かいながら、エー子が言った。
今日は花火も上がることになっていて、お祭りへ向かう浴衣姿の男女が多く歩いている。
「なんだか色々あったけど、七夕祭りも楽しかったよねー」
「うん、そうだね。私はまた、ねねちゃんに会いたいな」
「ねねちゃん、美月のこと大好きだもんねー」
会場近くになると出店もたくさん並んでいて、たくさんの人だかりが出来ていた。
「……ふぅ……」
「美月、大丈夫?」
「うん……」
こう人がたくさん居る場所は、今もちょっと緊張する。
すれ違う人々の顔がまったく分からなくて、声でもかけられたら……と心配になった。
今はエー子が一緒にいてくれるからいいけど……。
神社へ続く参道には、両脇にたくさんの出店が並び、いたるところからいい匂いがして、ちょっとお腹が空いてくる。
お祭りの囃子の音、笛の音が聴こえ、やわらかい橙色の提灯が風に揺れていた。
『浴衣コンテストを行いまーす! 飛び入り参加もオッケーですよー。19時スタートです!神社境内にステージが設置されますので、お集まりください!』
各々に取り付けられたステレオから流れるアナウンス。
「今年はずいぶん色んなことやるよねー。浴衣コンテストだってー。優勝したら何かもらえるのかなー」
エー子はさっそく買ったかき氷を頬張りながら言った。
私は大好きなタピオカミルクティーを飲む。