「美月、なんかあったの?」
「え?」
秋祭りに行くのに、お互い浴衣を着付け合いながらエー子が言った。
「最近、葉山先生のことあまり話さないし、朝も先生の姿見かけないし」
「ううん、先生と何かあったわけじゃないんだけどさ。この髪は本当に気分よ。なんとなくの気分」
「……」
無言になるエー子。
「"羽田 美月"ってさ、昔からこうだったじゃない。長いストレートの髪も目立つ理由だったんじゃないかって思って」
「まぁ、そうだけど……。美人の美月のトレードマークみたいなところがあったけどさ」
「それがもう鬱陶しくなっちゃって。私は目立ちたいわけじゃない。美人とか可愛いとか言われたいわけじゃない。昔の自分が今の自分を苦しめている気がして」
「それでバッサリといっちゃったの?」
「うん」
「もったいなーい! そういうとこサッパリしてるっていうか、本当に男っぽいんだからー」
「でも、案外似合うでしょ?」
「まぁねー、美人はどんな髪型にしても美人だけどねー」
「これで当分の間は『あ! 羽田 美月だ!』って指さされなくなるよ」
私は自信満々に言ってみる。