「……私もね、いけないところはあったのよ……引っ越して来て友達もそんなにいなかったし、人を好きになったのも初めてで、浮かれてたのよね……」
「……」
「人生がお父さん色に染まってしまったの。知り合いもいない私を、お父さんはずっと守ってくれて……」
ずっとラブラブな二人だと思ってたけど、そんなことがあったんだ……。
聞いてると、ますます私のことを言われているみたいじゃん……。
「葉山先生のお母さんも、そのことに責任を感じたのか、それからお父さんを追いかけることもなくなって、高校を卒業してすぐ別の人と結婚したって聞いたけど……」
「……」
それが園長先生ってことなのかな……。
「……それでもやっぱり、私には思い出したくない過去なの……。今の幸せを壊したくない……だから、二度と葉山先生と関わってほしくないのよ」
「……」
お母さん……。
ピンポーン。
「あ、エー子だ」
インターホンが鳴り、慌てて玄関へ走る。
「えっ!? 美月……どうしたのよ、その頭!」
入ってきたエー子が私を見ての第一声がそれだった。
「まぁ、なんとなく」
「なんとなくって長さじゃないじゃないよ!」
昔からの自慢だった、腰まであるストレートの髪をバッサリとショートにしたのだ。
口をポカンと開けたままのエー子の様子がおかしくて、笑った。