「なんて言うか、美月ちゃんもお兄ちゃんも大変だなって思っちゃって。一度あなたと話してみたかったんだ」
「うん、ありがとう」
「お互い好きなんです。はい、ハッピーエンド!って簡単にはいかないっていうか……すごく過酷な試練っていうか……」
過酷な試練……。
「おにいちゃんにとっても、そうなのかもしれないんだけど……。香代はお兄ちゃんをあきらめないと思う」
「……」
「あ、もう着いちゃった」
唯ちゃんはそう言うと立ち上がった。
「急に話しかけてごめんね」
「ううん」
そう言うと手を振り電車を降りた。
私が相貌失認じゃなかったら、先生とうまくいっていたかな……?
副園長は……お母さんは、私のことを認めてくれただろうか……。
暗い窓の外を見つめた。
思い返すのは、電車の中で見た先生と香代ちゃんの姿……。
『香代はお兄ちゃんをあきらめないと思う』
過酷な試練……。
私と先生は、うまくいかない運命なんだろうか……。
初めて先生に恋をして、愛しくて愛しくて、それでも想いを封印した二年前……。
私にはもう恋は出来ないと思っていた。
それなのに、再び動き出した想い……。
私は今、変わらないといけないのかもしれない。