「君たち! 危ないじゃないか!」
立ち尽くす私たちの元に声を荒げながら駅員さんが駆け寄って来た。
「怪我はない!?」
「……はい」
「はい……」
細い声で私たちが答えた。
「あの、すみません。今の電車の中に僕のカバンがあるんですが」
「え!?」
「!」
私たちは驚き先生を見ると、手には一冊の本だけが残っていた。
「分かりました。すぐに手配をするので駅員室に来ていただけますか」
「はい、よろしくお願いします。あ、ちょっと電話一本いいですか?」
駅員さんの言葉に先生は慌てる様子も見せず、ズボンの後ろポケットからスマホを取り出した。
「あ、もしもし河村先生ですか? 葉山です。申し訳ありません……」
少し遠くから聞こえた話し声は、学校に電話をしているようだった。
「……」
本当に先生なんだ……。
「君たちも! 一緒に駅員室に来て!」
先生に謝らなければいけないと口を開きかけた時、かき消されるように駅員さんに呼ばれた。