その時、目の前に赤い何かがキラキラと動いて見えた。


「!?」


そっと顔を上げると、私の目の前に女の子が立っていた。

この制服は星北高のもの、茶色の肩より少し長いストレートの髪。

そして、私の前に出された真っ赤なビジューのスマホリング。

それを見て、先生の妹の唯ちゃんだと気付いた。


「隣座ってもいい?」

「……うん」


二人だけで話すのは初めてかもしれない。

なんで声をかけられたのか……香代ちゃんのこともあってか、警戒してしまう。


「向こうの車両に乗ってたんだけど、慌てるように歩いていく美月ちゃんを見かけてね」

「ああ……」

隣に座った唯ちゃんが話し出した。


「電車の中から見えたんだけど、変な男たちに声かけられてたでしょ?」

「……」

「あなたも大変だよね……美人だからそういうことも多いでしょ?」

「……」

私は苦笑いをした。


「……この間、幼稚園でみんなで話しているのを、こっそり聞いちゃったんだ……」

「え?」

「なんて言ったかな……相貌失……」

「ああ……相貌失認?」

「うん、それ。まさか、そんなことがあるんだってビックリした」

「うん、私も自分でそう思う」

「そうなの!?」