「!? えっ!?」


「美月!?」


振り返ったエー子が私を見て声を上げた。


「カバン!」


見ると閉まった電車のドアにカバンが挟まっている。

いや、挟まるなんてもんじゃない!

ほぼほぼ中に置き去り、取っ手の部分だけ私が握っている状態だった。

焦りながら引っ張るが、抜けるわけがない。


その時、電車の中からドアを開けようとしている手が見えた。


「!?」

その隙間から私のカバンを外へ押し出そうとしている。

電車が異変を察知したのか、突然扉が開き、反動でその人も外へ押し出された。

「ドアが閉まります。ご注意ください」

アナウンスが流れると、扉が閉まり、まるで急ぐように電車は走り出した。


「……」

私は呆然と立ち尽くす。

目の前には……あの人が……葉山圭という先生が、走って行く電車を見つめ立っていた。