「なんで、汗だくよ?」
駅に先に着いていたエー子が、私を見て言った。
「べつに走ってこなくても、よかったのに」
「……ちょっと走りたい気分だったの」
ウソばっか。
せっかくシャワーも浴びてすっきりしたのに台無しじゃない。
ファミレスに着いても私は課題に身が入らなくて、ずっと外を眺めていた。
「美月、大丈夫?」
「え……あ、うん。ごめん、ボーっとしちゃって……」
「最近よく葉山先生と会ってるみたいじゃない」
「え、どうして……」
「チア部の子がさ、レンタルショップで美月が男の人と一緒にいたところを見たって。そう言う子が結構いてさ」
「あ……」
「あーきっと葉山先生だろうなって思って。アタシ嬉しくなっちゃってさー」
「……エー子」
「もう付き合い始めたの?」
「ううん、そういうんじゃないんだ」
「え、そうなの? てっきりもう付き合い始めたのかと思って喜んでたのに」
「あはは」
私は苦笑。
まさか、そんなに見られていたなんて……。
知り合いの少なそうなところのレンタルショップを選んでたのに……。
「相貌失認を克服するトレーニングっていうのを、先生が調べてきてくれて、映画を見るといいって、DVD借りに行ってたんだ」
「そうなんだー。でも、そこまで先生と近くなれたって、ホントすごい。電車で見てただけだったのにね」
「うん、本当にそう」