エー子は私の手を引き、その人の後ろにたどり着く。


「見える?」

「見えない」

コソコソと話す。


たくさんの人に囲まれ、その人の姿さえイマイチ見えない。

エー子にはあんなこと言ったけど、あの人がいつも何の本を読んでいるのか本当はすごく気になっていた。

私は必死に何度も背伸びをする。

電車の揺れに足がもつれながらも、何度も何度も背伸びをした。



「次は中央学園前駅~中央学園前駅~」

私たちが降りる駅のアナウンスが響いた。


「あ! 降りまーす!」

エー子は大きく言うと、再び私の手を引きドアへ向かった。

そう、わざとあの人の横をすれ違うように――――。


電車を降りる間際、私はその人の持つ本を思い切り覗き込んだ。