「不安だと思う。大変だと思う。でも、それで人の顔を少しでも認識できるようになる可能性があるのなら……そう思ったんだ」
「……先生」
「もちろんオレも付き合うよ、その映画鑑賞に。やれるだけ、やってみないか?」
先生……。
先生と一緒なら……先生がいてくれるなら……変われるかもしれない。
「うん、やってみる!」
「よし! 今度DVDレンタルしに行こう!」
「うん」
先生……色々調べてくれたんだ……。
私が相貌失認だということから目を逸らさずに、むしろそれを見つめてくれていて……。
そんな私と、こうやって一緒にいてくれる。
見つめた先生の顔は、なんだか嬉しそうに微笑んで、美味しそうにアイスコーヒーを飲む。
「先生」
「ん?」
私、先生の顔なら分かるよ。
「ありがとう」
この障害のもっとも苦手な『笑顔』笑顔は目も細まって、口角が上がったり、全ての形が変わってしまうから、誰の顔かわかりづらくなってしまう。
でも、先生の笑顔なら、わかるんだ。