「そろそろお昼にしようか」

「うん」

先生の言葉を聞きながら、後ろ髪ひかれるような思いで、私は再び振り返り大水槽を見上げた。

ベガとアルタイル……織姫と彦星はたった一年に一回でも会えたら幸せで……離れていても互いを想い続けている。

何千年も何万年も……いや、もっと昔からかもしれない……。




「あれ……」

隣にいたはずの先生の姿が見当たらない……。

暗がりの館内、たくさんの人で先生の姿を見失ってしまった。


「……先生」


キョロキョロ見回し、先生を探す。

焦れば焦るほど、先生らしき姿を見つけだすことが出来ないでいた。



「どうしたの?」


突然、肩をポンと叩かれ、驚き振り向く。

そこには二人の男性が立っていた。

「……」

先生ではないことはあきらかで……。


「どうしたの? 一人?」

「あ……」

「君みたいな可愛い子が一人なんて」

「いや……あの……」

バクバクと心臓が鳴った。

嫌な汗が流れる。



「美月? どうした!?」

後ろから聞こえた声に振り向くと、先生が立っていた。


「先生!」

「この子に何か用でも?」

先生の声のトーンが下がった。


「いや……何も……」

「なんだよ一人じゃねーじゃん」


男たちはブツブツと言いながら去っていく。

その後ろ姿を見ながら、私はホッと息を吐いた。