連日のエー子とのデートのシミュレーションは、とにかく大笑いで、ぜんぜんためにもならないものばっかりだったけど、それも楽しかった。
「まったく美月は、美人とか可愛いって言われるくせに恋愛初心者ってねー」
「しょうがないでしょー。毎回それ言わないでよー」
先生がどうして私をデートに誘ってくれたのか分からないけれど、この長い夏休みを持て余していた私は、先生と過ごせるなんて飛び上がるほど嬉しかった。
あっという間に、先生との約束の日。
この日のために一新した白のレースのワンピースと、編み上げのヒール。
今まで持っていなかった物で装備を整えた。
「美月どこ行くの!?」
私の姿を見て、お母さんが驚いている。
「そんな女の子らしい恰好……」
女の子らしい……聞き捨てならない言葉……。
「デートですけどっ」
「デート!?」
動揺で、あわあわと動き回る母親。
ちょっと大げさでしょーよ。
「どこ行くの!?」
「水族館だって」
「水族館!? 誰と!?」
「……圭……葉山先生」
「え……」
今まで落ち着きなく動いていたお母さんの動きが、ピタリと止まった。
「?」
「……葉山先生って……だって先生でしょ?」
「うん」
「うんって……先生とデートなんて……」
「どうして?」
「どうしてって美月……」
玄関のドアを開けると、お母さんは止めるように私の腕を掴んだ。