「あーもう! なんなんだろ、あの香代って子!」
「エー子、そのセリフもう6回目」
「だってー、美月腹立たないの!? あの子のあの言葉!」
「……」
短期のバイトを終え、数日ぶりに会ったエー子は、ずっとイライラしていた。
ズズズッと荒々しい音を立て、トロピカルティーを飲み干すと、再び飲み物を取りに行くを何度も繰り返していた。
チアリーディング部の練習の合間を縫って、夏休みの課題を進めるためファミレスに来ていた。
お昼時とあって混み合った店内はにぎやかで、大きなエー子の声も気にはならない。
日差しはぐんぐん強くなり、涼しい店内からもギラギラした太陽がまぶしく見えた。
「はあぁー喉渇くわー」
「……」
おばちゃんみたいなセリフに私は笑った。
あの時の、香代って子の言葉には私もショックだったけど、それ以上にエー子がイライラと怒っている様子に驚いている。
「とにかくさ! どいつもこいつも一言多いんだよね『美人だから勘違いするな』とかさー」
「……」
「ちょっと美月聞いてるー!?」
「聞いてる、聞いてる」
私は大きくうなずいた。
美人だから……か。
「エー子早く課題終わらせないと、次いつ会えるかわかんないじゃん。チアの練習も忙しいんでしょ?」
「うん、そうなんだけどー。ねぇ、たまには練習見に来てよ。みんなも美月が来たら喜ぶよ」
「……ありがと」