こみ上げる涙を何度もこらえ、走り回った。
慣れないゆかたが足にまとわりつき、うまく走れない。
何度もくじきそうになる下駄を脱ぎ、素足で走った。
「ねねちゃん! ねねちゃーん!」
のどが枯れるほど大きく叫ぶ声に、ねねちゃんが応えてくれることを祈って、何度も何度も名前を叫んだ。
走り回り、再び園の近くの住宅街に戻ってきた。
遠くから聞こえる声に、他の人たちも探してくれているのが分かる。
「ねねちゃーん」
「ねねちゃーん!」
みんなの叫ぶ声が街に響いていた。
「!」
見ると、立入禁止と書かれた金網が張られた空き地の入口に何か落ちていた。
それは、チューリップの形をした『よしくら ねね』と書かれた名札だった。
その中には、私が作ったウサギも入っていた。
ねねちゃんの……。
「ねねちゃーん!!」
私は大きく叫んだ。
入口の金網が少し破られ、強くなった風にカチャカチャと音を立てていた。
「……」
私は思い切り、ゆかたをたくし上げると、その金網の穴へ体を無理やりこじ入れた。
私には小さいかな……。
着慣れないゆかたが色んなところに引っかかり、ピリッという破れる音がした。
数日前に降った雨の水たまりが引かず、ぬかるんだ地面、草が伸び放題のその敷地内へ足を踏み入れる。