その時、ガサッと目の前の笹の葉に短冊が掛けられた。
揺れる袂、ピンクの浴衣、ミルクティー色の髪……それを見てドキッとした。
「!」
香代ちゃん……。
掛けられた短冊には、
『圭ちゃんは、私のもの』
そう書かれていた。
「……」
私を見つめる鋭いまなざし。
なんの言葉もないことが余計に恐怖心をあおった。
「おねえちゃん、おねえちゃん! みつきおねえちゃん!」
ぐいぐいとゆかたの袂を引っ張られ、我に返る。
「え……あ……」
私はその女の子の前にしゃがみ込むと、香代ちゃんはそのまま玄関の中に入っていった。
「……」
「おねえちゃん!」
「あ……ごめんね……えっと……」
この声……髪型……。
「えっと……ねねちゃん?」
「うん」
私服だし、今日は名札がないことで、たくさんの園児の中から見分けるのが困難になっていた。
「ねねちゃん、どうしたの?」
「あのね、ねね、おトイレいきたいの」
「トイレ!? ママ、パパは?」
周りを見るが大人が一緒の様子はない。
「パパもママも、おみせやさんがいそがしいの」
「あーそうか……」
屋台をやっているのか……。