「きゃー! 美月似合うー!」

テンション高く登場したエー子は、いつにも増して楽しそうだ。

「やー! ゆかたってハマるねー! 今度、街の夏祭りにもゆかた着て行こうよー」

そう言いながら、エー子はぴょんぴょん跳ねた。

「う……うん……あんまり動くと、ゆかた崩れるよー」

エー子のあまりにも嬉しそうな姿が、ちょっと微笑ましく思えた。


「あ、葉山先生来たよ!」

私の耳元で言ったエー子の言葉に、ドキンと胸が鳴った。


「圭さん、お手伝いありがとうございますー」

「いえ、こちらこそ、お疲れ様です」


先生の低い声が聞こえる……。

ドキドキとしながら、私はそっと振り向いた。


真っすぐ、先生と目が合ったことが分かった。


「……」


「……」



少しずつ、少しずつ


一歩、一歩


先生が近づく。



「ちょっとー見つめ合ってないでよねー」

そう笑いなが、エー子が私から離れた。


目の前に先生が立つと、にぎやかな周りの音に消されてしまいそうなくらいの小さな声で


「キレイだね」


そう言った。



私はギュッと目を瞑り、うつむいた。

この鼓動の速さ、胸が締め付けられるような、この今までにない感覚。

この感覚がなんなのか、何か大切なものを思い出さなければいけないような……。

そんな……何か……。