駅から家までの道。
そんなに遠いわけじゃないけど、ゆっくり、のんびり歩く。
もっともっと先生と話していたくて、もっともっと先生と一緒にいたくて……。
一歩
一歩
止まって
また一歩
「先生、今度またあの展望台に連れて行って」
「そうだな。晴れた綺麗な夜に見に行こう」
先生の持つ空気感を、先生のほのかに感じるライムの香りを……ずっと、ずっと感じていたい……。
「美月!」
その声に顔を上げると、玄関の外にお母さんが立っていた。
「お母さん!」
「もーずいぶんゆっくりだから心配しちゃったわよー。また何かあったんじゃないかと思って……あら……」
相変わらずの心配性で、ちょっと引くわ……。
「あ、先生が送ってくれたの」
「あ……そうなの? でも、星北高の先生って……」
「あ、葉山 圭です」
先生が挨拶をすると、お母さんの動きが一瞬止まった気がした。
「葉山……」
「うん、偶然にもバイト先の幼稚園が、先生の両親がやってる幼稚園でね」
「幼稚園!?」
「うん、なに?」
いちいち反応が大きくて、こっちが驚く。
「あ……いえ……」
話し方で、お母さんの様子がおかしいことに気づいた。