「葉山先生は幼稚園には関わってなさそうだけど、初日にして偶然会えるなんてラッキーだったね」
「……」
「もー美月、いつまでも怒ってないでよねー」
夏休みに入ってからは電車にも乗らないし、先生も休みだろうから会うこともなかったし……。
一か月会えないと思うと淋しかったし、また先生のこと見ても思い出せないんじゃないかって心配だったから……。
こうやって会えて嬉しかったけどさ……。
私服だと感じが変わって、一瞬わからなかったな。
「葉山先生、高校教師してるけど、なんで家業継がなかったんだろうね。すっごく有名な幼稚園で評判良いのにね」
「うん……」
『家業をオレに継がせたいから、コミュニケーションが取れないなんて大問題だ!って。それが苦痛でたまらなかった』
「……」
先生の言葉を思い出す。
先生の話だと、お母さんはとても厳しい人だって……。
「明日から楽しみだねー。がんばろー」
エー子は昔から頑張り屋でポジティブで、一緒にいて本当に助けられてばかりだ。
以前の私とエー子は似たようなところがあって、自分は自分、他人は他人。
そのスタンスが変わってしまった今の私には本当にありがたかった。