「ちょっと父さん! まだ残ってるよー」
「あれ圭さん。今日は圭さんもご一緒だったんですか?」
小島先生が驚いたように声をかける。
圭さん……?
どこかで聞いた名前だとふと思った。
「今日はムリヤリ運転手をさせられ……」
振り向くと、そこに聞き覚えのある低い声……。
「え……美月!?」
「先生!?」
名前を呼ばれ、そこに立つのが圭先生だと分かった。
「ちょっとエー子! どういうことよっ!?」
「もーそんなに怒らないでよー」
幼稚園から駅に向かう道、私はずっとエー子に怒っていた。
バイト初日の今日は、園内の見学と先生たちの紹介をしてもらい終了した。
「エー子は知ってたんでしょ!? あの幼稚園が圭先生の両親が経営している幼稚園だって」
「もちろん」
「もちろんって……」
しれっと答えるエー子に私はイラッとした。
「始めは偶然よ。短期のバイトを探していて、あの幼稚園が載ってて、その仕事内容も読んでみたらいいじゃない。これなら美月だって苦無く出来るかなって思ったの」
「……それは……ありがたいけどさ……」
「そうしたら、葉山先生の両親の幼稚園ってわかって、もうこれは絶対このバイトやるべき!って思ったの」
「……」
エー子の気持ちは、ありがたいけどさ……。
「……葉山で"リーフ"か……なるほどね」
気づかなかったなぁ。
「うん、そうそう」
エー子はなぜか常に笑顔だ。