一通り園内を案内してもらい事務室に戻ろうとした時、園児がいるであろう部屋に近づくと、一つの部屋から園児たちが「わぁー」というにぎやかな声と共に飛び出して来た。
「走らないよー」という先生の声。
「あれぇ? あたらしい、せんせい?」
エプロンの裾をクイクイと引っ張る感覚に下を見ると、女の子が話しかけていた。
私はその女の子の前にしゃがみ込むと、
「初めまして。先生たちのお手伝いに来たの。よろしくお願いします」
そう言った。
「せんせいたちの、おてつだい?」
「うん、そうなの」
チューリップの形に作られた胸元のバッジには、"よしくら ねね"と書かれていた。
「ねねちゃん、よろしくね」
「うん! おねえちゃんの、おなまえは?」
「羽田 美月です」
「はねだ みつき……みつきおねえちゃんね」
「うん、よろしく」
そう言うと、ねねちゃんは大きな声で「うん!」と返事をした。
肩よりちょっと短い栗色のフワフワの髪を揺らし、大きな瞳が印象的な可愛い女の子だった。