「『ウワサってすごいな』って思ったでしょ」
そう言いながらエー子が私の顔を覗き込んだ。
「え……ピンポン。なんでわかった?」
「美月、人に見られたりウワサされたりするのすごく嫌がるようになったからさ」
「……うん、まぁね」
「でも、その変な男に突き飛ばされたっていうのも、こうやってウワサされるのも美月だからだと思うんだよ」
「え?」
「悪い意味じゃなくてね。美月は二年前と今じゃ色々と変わってしまったことが多いけど、周りの人が美月を見る目は何も変わってないってこと。美月は美人で目立つから、それで変な男も寄って来ちゃうのかなって……」
「……フクザツ」
「うん、そうだよね……。前は周りに友達もいっぱいで、常にそばに誰か居たから何も感じなかったことかもしれないけど、これからは色々注意しないと危ないことも多いから」
「うん、ありがと。エー子がたまに真面目だとビックリする」
「ストレートに嫌味ゆーな!」
「あはは」
そうだよね……誰もがみんな私が相貌失認だと知っているわけじゃない。
私と他人の温度差の違い。
前の私、今の私、行動も気持ちもまったく変わってしまった。
以前の私を知っている人にとっては、突然のように変わった私のことを何も知らずに近づいてくるかもしれない。
以前とは違うんだと、私自身が自覚しないといけないことだったんだ……。