こんなに雨が嫌いだったか……と自分でも不思議なくらい、雨の日は憂鬱だった。

きっとそれは、星空が見えないからだと最近気づいた。

一面グレーに覆われた空が、なんとなく憎らしく思う。



「ちょっと美月ー!」

教室の後ろのドアから飛び込んでくる姿、その声でエー子だとすぐにわかる。

休み時間、生徒の少なくなった教室にやって来て私の前の席に座る。

これは毎日のこと。


「なぁにー? 大きい声だしてー」

先生からもらったプリントを夢中で読んでいた私は、エー子のあまりにも大きい声にちょっとイラッとした。


「何じゃないわよー! 昨日、大変だったんだって!?」

「え……」

「駅で変な男に突き飛ばされたって……」

「どうして……」

「ちょうどその駅にいた知り合いが見ていて、それが美月だったって、さっき聞いてさ。ビックリしちゃったよー」

「……」

あんな大騒ぎになって、誰に見られててもおかしくないことだけど、ウワサって怖いな……と驚かされる。