「先生、お母さんが迎えに来てくれるみたいだから、ここで平気。ありがとう」

「そっか、よかった。良いお母さんだな」

「……」

『良いお母さん』その言葉にさっきの先生の話を思い出す。



「お母さんが来るまで居るよ」

「先生……ありがと」


改札を出て、再びベンチへ座った。

目の前を行き交う人々は、激しく降り続く雨に早足になる。

「はぁ」とため息をつき見上げた空は、この天気のせいで真っ暗だ。

星どころか、何も見えない。


「そうだ、これ」

先生はカバンの中からプリントを取り出した。

「美月が知りたがっていた、"ドラゴンヘッドとドラゴンテイル"の資料」

「おお!」

思わず発した興奮したおっさんのような声に、先生が笑いだす。


「美月の誕生日を聞いていたから調べてみたんだけど、美月、ドラゴンヘッドが双子座で、ドラゴンテイルは射手座だったよ」

「そうなんだー。 確かドラゴンヘッドが……」

「ドラゴンヘッドは今世での生き方、歩むべき道。ドラゴンテイルが前世から引き継いできたもの、宿命」