「……人はね、私のことを『美人』とか『可愛い』と表現してくれる。それで私は自分を『美人らしい』って思う。でもそれは、イコール悩みがない人と思われてる」

「そんなこと……」


私はまた、頭を横に振った。

「『美人だから調子乗ってる』って思われてる。何が出来ても出来なくても、それは努力じゃなくて『美人だから得だよね。何も悩みなんてないでしょ』って。悩みがあるとかないとか、それは外見なんかじゃ判断できないことじゃない」

「……」

「障害があって人の顔がわからないんです。それは自分の顔も。そう言っても信じてもらえることは少なくて。信じてもらえても、『美人なのに自分の顔がわからないなんて残念だね』って。何をしても、どんなことをしても、今の私にはプラスになることはないんだって思えてしまう……」

少しの無言。

いくつ駅を過ぎたのかもわからなくなるほど、私は夢中で話していた。


「前に言ったよね」

先生が小さく話し出した。


「きっと本当の君は周りにたくさんの友達がいて、いつも笑っていたって」

「……」

あの時……今の私には生きにくい世界かもしれないって話してくれた時……。


「オレはずっと君を知ってたよ」

「え……」


トクンと胸が鳴った。