「美月、大丈夫?」
「あ……うん……」
私は顔を上げ、エー子に向かって笑顔を見せた。
こんなふうにウワサされることは、いつものことで……。
でもそれが、私はすごく苦痛に感じるようになっていた。
苦痛……苦痛というか、恐怖といった方がいいかもしれない……。
「チアの大会なんだけど、今回新しいスタンツの練習をしてるんだー。美月にも絶対見に来てほしい」
エー子は私に向けられたヒソヒソ話を逸らすように笑顔で話し出した。
「うん、そうだね。今度の大会は見に行こうかな……」
新しいスタンツ……か。
チアリーディングの技術の名前で、組体操のように人を乗せたり飛ばしたりする演技のこと。
前の私なら、チアリーディングの独特の名称を覚えることも演技することも、嬉しくて楽しかった。
中学は部活には入っていなかったけれど、とにかく動き回ることが好きだった私とエー子は、スポーツをするのも好きだったし、スポーツ観戦もよく一緒に行っていた。