「ここは君が降りる駅じゃないよ」


ビクッ


「え!?」


あきらかに耳元で発せられたような言葉に驚いて、私は振り向いた。


「あ……の……」

見ると後ろに一人の男性が立っていた。


「なんでここで降りたの?」

「え……。あ……えっと……」


男性……というより服装は若く見える。

髪型も体型も……頭の中で"誰!?"を駆け巡らせる。

知っている人かな……どこかで会ったことがあるのかな……。

眼鏡をかけてる……。

頭をフル回転させても、どうしてもわからなかった。


「あの……どこかでお会いしましたか?」

私は恐る恐る尋ねた。


「え!?」

ビクッ

その人の急に大きくなった声に、私はビクッと体を震わせた。


「ボクのこと覚えてないの!?」

その人はそう言うと、力強く私の手首を掴んだ。


「!?」

いっ……。

「いたい!」


私が大声を上げると、突然突き飛ばされた。

「きゃあ!」


ドンと地面に体を打ち付けた。


「……痛っ……」