「……いいお母さんだな」
「え?」
ちょっと先生の声のトーンが落ちたのを、私は聞き逃さなかった。
「先生?」
暗がりで見にくさも相まって、先生の顔が少し淋しそうに見えた気がした。
先生の顔はどんな顔なんだろう?
先生の本当の表情が見えなくて……。
「いや、なんでもないよ」
先生はそう言いながら、優しく微笑んだ。
「……」
先生……。
展望台を下りると、さっきまで宴会をしていた人たちはもう居なくなっていた。
「さすがにみんな帰ったんだな」
「そうだね。誰も居ないねー」
さらに坂道を下ると、遠くまで見えていた街の灯りが、少しずつ少しずつ消えているのがわかった。
暗くなっていく街。
星空はさらに大きくなっていった。
そろそろ街も眠りにつく━━━━。