「そろそろ帰ろうか。送っていくよ」

「うん、ありがとう」

スマホの時計を見ると21時を回っていた。

何度も家からの着信。

部活も辞めて、こんなに遅くなることも最近はなかったからな……。

あのお母さんのことだから、また取り乱してそうだし……。


「大丈夫? ずいぶん遅くなっちゃったし」

私がスマホを直視しているのを見て、先生がそう言った。

「あ、うん、大丈夫。私が障害を負ってから、母親がものすごく心配性になったから。前はそうでもなかったのに」

急な螺旋階段を下りながら私が言うと、先生は何度も振り返る。