その昔、天界には不死の甘露『アムリタ』という飲み物がありました。
不死の甘露『アムリタ』は、「それを飲んだものは、不滅の生命を得ることが出来る」と言われ、その貴重な神秘の飲み物は天界の神々だけに飲むことが許されていました。
ある時、天界では『アムリタ』による酒宴が催されていました。
ところが、悪魔のドラゴンが神に変装し、その饗宴に潜り込み、こっそりと『アムリタ』を飲んでいたのです。
その様子を見ていた太陽神と月神は、自分たちでは力不足でとても太刀打ちできないと、根源的な最高神であるヴィシュヌにドラゴンの退治を頼みました。
神々の報告を受けたヴィシュヌ神は、ドラゴンの胴体を頭と尻尾の二つに断ち切りました。
ところが、不死の甘露である『アムリタ』を飲んでいたドラゴンは死ぬことが出来ず、ドラゴンヘッド(竜の頭)とドラゴンテイル(竜の尻尾)という別々の生き物として生まれ変わることになったのです。
告げ口をした太陽と月に恨みを抱いたドラゴンヘッドとドラゴンテイルは、それ以来、太陽と月を飲み込もうと、いつも追い回すようになりました。
太陽と月は、ドラゴンヘッドとドラゴンテイルを恐れ、逃げ回るようになったのですが、時々飲み込まれてしまう。
しかし、ドラゴンヘッドは体が無いため、太陽と月はすぐまた現れる。
太陽と月、二つの星を飲み込んでしまおうと追いかけているドラゴンは、いつまでも輪廻の輪を巡ることになったのです。