「あちこち住んだ中で、小近島がいちばん好きだった。真節小は楽しかった。でも、タイムリミットも知ってた。最初から知ってたよ。あたしたちが卒業するときに真節小が閉校になるって。何で? せっかく好きになったのに、何で消えちゃうんだよ?」
閉校の手続きや書類整理に追われていた父の姿を、よく覚えている。忙しそうだった。でも、いつかはそういう役目を引き受けることになると、父もわかっていたみたいだ。
どの島も、子どもの数は急速に減っている。島の小学校で先生を続けていたら、閉校や統合に立ち会う可能性も低くない。
「父は初めての職務で一生懸命だった。それ以上に、真節小にとっての最後の日々になるから、そのために一つひとつ丁寧に、学校行事も日常もこなしていこうとしてた。大変そうで、でも生き生きとしてて。あたしも、父と同じようにしていたかった」
溶け込める場所がほしい。そんなもの手に入らない。
両親の仕事が嫌い。両親の仕事が誇らしい。
相反するものの間で、あたしはいつも揺れていた。心を揺らすのは危険なことだと、自分でもわかっていたのに。だって、小近島という小さな世界に入り込んでしまったら、いずれ来る別れのとき、苦しくて仕方ないんだから。
物心つくのがひどく早い子どもだったという自覚がある。四歳のころに経験した引っ越しで、あたしは思い知った。小さな世界を好きになればなるほど苦しい、と。だから、最初からサヨナラまでのカウントダウンをして、泣かないように備えなきゃ。
閉校の手続きや書類整理に追われていた父の姿を、よく覚えている。忙しそうだった。でも、いつかはそういう役目を引き受けることになると、父もわかっていたみたいだ。
どの島も、子どもの数は急速に減っている。島の小学校で先生を続けていたら、閉校や統合に立ち会う可能性も低くない。
「父は初めての職務で一生懸命だった。それ以上に、真節小にとっての最後の日々になるから、そのために一つひとつ丁寧に、学校行事も日常もこなしていこうとしてた。大変そうで、でも生き生きとしてて。あたしも、父と同じようにしていたかった」
溶け込める場所がほしい。そんなもの手に入らない。
両親の仕事が嫌い。両親の仕事が誇らしい。
相反するものの間で、あたしはいつも揺れていた。心を揺らすのは危険なことだと、自分でもわかっていたのに。だって、小近島という小さな世界に入り込んでしまったら、いずれ来る別れのとき、苦しくて仕方ないんだから。
物心つくのがひどく早い子どもだったという自覚がある。四歳のころに経験した引っ越しで、あたしは思い知った。小さな世界を好きになればなるほど苦しい、と。だから、最初からサヨナラまでのカウントダウンをして、泣かないように備えなきゃ。