「答えられないよね。だってあんた、どっか行けって言ったらほんとに行くし、いまだって逃げようとするし」
「…………」
答えられずにうつむくわたしに、彼女は言った。
「あんた、慧が難聴って知ってるんでしょ?」
「……うん」
「だったらなおさら、近づかないで。あんたなんかに、慧のことは絶対にわからない。わかるはずがない」
「なん、で」
わたしは目を見開いて彼女を見た。
なんで、そんなことを言うんだろう。
わからないかもしれない。幼馴染の彼女のほうが、ずっと広瀬くんのことをわかっているかもしれない。
だけど、絶対、なんて。