必然的に、広瀬くんの隣を歩くことになる。
いつもはなんとも思わないのに、目の前の付き合いたてカップルが初々しすぎて、つられてこっちまでーー
「愛音、もしかして緊張してる?」
「してません」
「じゃあ、手でも繋いでみる?」
「繋ぐか!」
なにがじゃあだ、全然文脈が繋がってないし。
「あはは、愛音はおもしろいな。すぐ本気にするから」
「く……っ」
完全にからかわれている。
慣れているんだ、こういうの。きっとわたしが繋ぐと言えば簡単に繋ぐだろうし、抱きついたり抱きつかれたりするのだってきっと日常茶飯事なんだ。
ただの付き添いなのに、余計なことばかり考えているじぶんが、急にバカらしくなった。
たかが映画じゃないか。付き添いは付き添いらしく後ろから大人しくついて行って、映画が終わればあとは2人で〜とか言ってサラッと消えればいいのだ。それで、わたしたちの役目は終わり。