「お願い、倉橋さんにしか頼めないから」

「うう……」

ウルウルと小動物的な目で見つめられると、わたしはどうしても弱いのだ。どうしてわたしのまわりには、こう無自覚に押しの強い人ばかりいるんだろう。

「……広瀬くんが、いいって言うなら」

「ほんと?ありがとうっ!」

いいって言わないでほしい。察してほしい。付き合いたてのふたりとただの友達のわたしたちが並んで映画を見る気まずさを……!

だけどきっと察してくれないんだろうなあとも思う。広瀬くんなら、映画?いいね行く行くとか、そんな軽いノリでオッケーしそうな気がする。というか、そんな気しかしない。