朝からずっと、空にはだだっ広い灰色の雲がかかっている。グラウンドのフェンスの向こうにかすかに見える隣の学校を、わたしはぼんやりと眺める。

つい数日前に行った場所。わたしが通う学校とは雰囲気もそこにいる人たちもなにもかもが違って、まるでこことは別の世界みたいだった。お祭りの雰囲気に乗せられて一緒に盛り上がってみたりもしたけれど、時間が経てばやっぱり、いままで通り遠い場所であることに変わりはない。

ーー広瀬くん、いま、なにしてるんだろう。

ふいにそんなことを考えて、普通に授業中だよねと思い直す。

でも、広瀬くんが真面目に授業を受けている姿は、ちょっと想像できなかった。

「倉橋さん、ちょっといい?」

休み時間、来海に手招きされて、廊下に出た。

「あのね、わたし、上谷くんと付き合うことになったんだ」

「えっ」

両思いなのはわかっていたけれど、面と向かって言われると、やっぱり驚いてしまう。

清楚な来海と、見た目ヤンキーな上谷くん。最初はなんでこの人?って思ったけれど、少しだけわかった気がする。

『話してるうちに、いい人だってわかって』

きっと、たくさん話をして、その人を知ったから。

お互いを大事に思い合うふたりは、いまではすごくお似合いに思えた。

「そっか。おめでとう」

わたしは心からそう言った。

「えへへ、ありがとう」

そう言って、白い頰をピンクに染める来海はほんとうに可愛くて、わたしも嬉しくなった。