「おい乃亜、いつまでくっついてんだ」
「えーっ。いつもやってるじゃーん」
「紛らわしい言い方するなっ」
い、いつも……?
こんなすごい美少女が近くにいて、いつもこんなことしてるの……?
それって、どういう関係?
キャハハと笑う楽しそうな乃亜さんに、鬱陶しそうにしながらも本気で嫌がってはいない広瀬くん。
距離が近くて、ほんとうに仲がいいんだってわかる。
ーーわたし、もしかして邪魔なんじゃないかな。ていうか、明らかに邪魔だよね。
「あの、わたし、行くね」
わたしは言った。
「えーっもう行っちゃうの?もっとお話したかったのにー」
顔では残念そうにしながら、少しも残念がっていない声。
「あ、おい、愛音」
広瀬くんの声に、振り向けなかった。
ーーあそこに、いたくなかった。
あんなに可愛い女の子とじぶんを比べること自体、間違っているってわかっているけれど。
オシャレで、可愛くて、明るくて、わたしとは何もかもが違う、どう頑張っても絶対届かない。
そんな女の子の前に、立っていられなかった。いちゃいけない気がした。
さっきは探さなくても見つけられたきみの姿を、いまは見つけられなかった。
見つけたくなかった。