「でも、意外だった。石田くんにそういう趣味があったなんて」

わたしが言うと、石田くんは拗ねたような顔をする。

「……笑いたきゃ笑えばいい」

「ううん、そうじゃなくて。石田くんってしっかりしてるけど、違う顔もあるんだなって」

石田くんは、眼鏡の奥の目を広げた。

「バカにしないのか?」

「しないよ」

わたしは言った。

「人の好きなことを、笑ったりしない。じぶんが笑われたら、嫌だし」

「……そうか。ありがとう」

石田くんは、顔を真っ赤にして、つぶやいた。

人の意外な一面を見ると、驚くけれど、感心もする。すごいな、と思う。

わたしには来海や石田くんみたいに、夢中になれることがないから。あまり人前では言えないけれど、我を忘れるくらい大好きで、その思いを貫けること。


広瀬くんみたいに、好きなことを全力でしたいって、じぶんの気持ちを堂々と言える勇気も、わたしにはないから。