「なんで笑うの?もっと、怒ればいいのに。やり返せばいいのに……っ」

悔しかった。もしそこにわたしがいたって、きっとなんの力にもならなかったけれど、でも、悔しかった。

「いいんだよ、そんなことどうでも。好きなこと思いっきりやったから、調子乗るなって言われようがボコられようが、べつに構わない」

「構うよ。もっと構おうよ……」

ただの高校生のくせに、なんでそんなガンジーみたいな屈強な精神を貫いてんの。

「じゃあ、愛音が代わりに怒ってよ。怒るの得意だろ?」

「……いいよ。むしろ、もう怒ってる」


きみはそうやって、わたしの前で、いつも笑うから。

だからいまは、わたしがきみの代わりに怒ってあげる。たくさん、悔しがってあげる。

わたしにはこんなことしかできないけれど、それがきっと、いまここにわたしがいる理由なんだ。