きみはその問いには答えなかった。代わりに、愛音、ともう一度わたしの名前を呼んだ。
「あのさ、その辺に、なんかちっこいの落ちてない?」
「え……?」
「……なんか、白くて丸っこい形の。ごめん、いま、動く元気なくてさ」
「う、うん」
わたしは戸惑いながら、しゃがんで白くて丸っこいなにかを探した。
よく目を凝らすと、足元にころりと転がる白い物があった。なんだか変わった形だ。コードレスのイヤホンみたいだけれど、イヤホンと違って引っ掛けるところがある。
ーーなんだろう、これ。
「あった、よ」
気になりつつ、わたしは広瀬くんの手に、それを乗せた。
「ありがと」
広瀬くんは「いてっ……」と顔を歪めながら起き上がって、それを耳につけた。
「助かったよ。これがないと、困るんだ」
傷だらけで痛々しい顔で、きみは笑って言う。
いつもはニット帽で半分隠れているオレンジ色の髪。細い猫っ毛が風にそよそよと揺れて、その下の耳があらわになる。どちらの耳にも、その白くて丸っこいものがついている。
頭に浮かんだ言葉はあった。
でも、なんで広瀬くんが……。