「わかんねえけど……アイツ、絶対に抵抗しないんだ。絡んでくる奴が悪いのに、暴力は嫌いだとか言って」
「……」
ドクン、と、胸が鳴った。
嫌な予感がした。
わたしも、広瀬くんが約束を破るようには思えなかった。
約束を破らない人が、約束を破る理由。
それって、そうせざるを得ないなにかが、あったからなんじゃ……。
考えすぎかもしれない。でもーー、
「……わたし、広瀬くん探してくるよ」
「えぇっ、いまから?」
「なにかあったら、連絡するから」
わたしはそう言って、人混みのなかに駆け出した。
人混みは苦手だし、このなかから1人を見つけるなんて難しいのはわかっている。
考えすぎならそれでいい。なにもなければ後で笑ってくれればいい。
でも、そうじゃなかったらーー
そう思ったら、じっとしていられなかった。
行ってどうなるかなんてわからない。もしきみが困っていたとしても、わたしにできることなんてないかもしれないし、邪魔なだけかもしれない。
でも、わたしが助けてほしいとき、きみが来てくれた。そばにいて、声をかけてくれた。
『ひとりじゃない』
そう言ってくれたこと、嬉しかったから。