「大丈夫?倉橋さん、疲れちゃった?」
「うん、ちょっと、このテンションに……」
「お祭りってすごいよね。あの石田くんをあそこまで変えちゃうなんて」
来海がぷぷっと思い出し笑いをする。ものすごく楽しそうだ。
そのとき、
「来海さーんっ!」
むこうのほうから、叫びながらすごい勢いで走ってくる黒い影が。
「あっ、上谷くん!」
来海がパッと顔を明るくする。
だんだん近づいてくるその姿に、わたしは思わずギョッとする。
「え、あの人……?」
目の前に到着したその人に、わたしは唖然とした。
「はじめまして、上谷竜司といいます!」
わたしは一瞬言葉を失って、ハッと我に返って自己紹介をする。
「えっと……倉橋愛音です」
「倉橋さん、お話は聞いております、よろしくお願いしまっス!」
バリバリの体育系の挨拶をされて、わたしはたじろぐ。
黒髪のリーゼントに改造学ラン。ひと昔前の漫画から抜け出してきたような、ザ・ヤンキーな風貌。
そうか、さっきコスプレ喫茶とかあったし、きっとアレだ。そうに違いない。
「えっと、コスプレだよね……?」
「ううん、上谷くんはいつもこんな感じだよー」
「……そうなんだ」